脳内お花畑を実現するために

サラリーマン兼業ライター江良与一 プロブロガーへの道

一番の決め手は経済的基盤の有無 『移住✖️リモートワーク 誰も知らない移住のポイント』読後感

 

 Kindle Unlimited対象本でなければ読まなかったであろう本シリーズその7は、現在のところの私の最大の関心事である、地方移住の実態を綴った一冊。昨年秋に母親に要介護の可能性が生じなければ、あと10年は関心を持たなかったであろうジャンルの本でもある。

 

コロナ禍のおかげで、家にいざるを得なくなり、企業もその社員に在宅のままで業務をさせざるを得なくなったおかげで、テレワークが一気に社会に浸透した。もともと、ワークステーションとしてのPCがあって、ネットに接続が可能であれば会社という「場」に行かなくても可能な職務というのは多々あったのだろうとは思うが、コロナ禍で、それが一挙に表面化し、あまつさえ、「推奨」さえされるという事態が出来した。同じ企業に営業職として在籍する後輩に聞いてみたら、最近はクライアントの方が、来訪ではなく、TV電話システム等を用いてのリモート面談を要請してくるとのお話だった。ど根性営業職だった経験のある私としては、流石に商談をリモートで行うということにはやや心理的に抵抗はあるのだが、自分が訪問を受ける立場である現在の職務においてはリモートの面談の方が便利だとも感じている。私の業務は少々特殊で、同じ職務を行う同僚が関西の拠点に存在する。今までなら、取引先は私と、関西の同僚を訪問するという、時間的にも距離的にも無駄の多い二度手間を踏まなければならなかったのだが、今なら、リモートで、一度に済んでしまう。しかも関係者全員が「同席」するので、話が変に食い違うこともない。

個人的に言うと通勤にとられる時間と体力が浮くことは非常にでかい。ストレスの量が全く違う。減ったストレスの分だけ有益なアウトプットがなされているのか、と問われてしまうと何も返せないのだが(笑)。

 

閑話休題。コロナのおかげもあって、今まで常識とされていたことの多くがその根幹を揺るがされている。職住接近もその一つだ。前述したように多くの業務はリモートで事足りることが明白になった今、職場に行くことが「必須」ではなくなってきており、したがって、職場に近い場所に住む必要も無くなった。会社に行くことが「日常」でなく、いわば出張するようなものであるなら、コストの高い都心近くに居を構える必要もない。というわけで、昨年は都心への通勤圏内と思われていたゾーンのさらにその先を生活の拠点にしようとする人々が増えたようだ。東京都は人口流失の方が多い都市になったようである。私も今年中には東京脱出組の一人になる予定である。

 

著者吉永氏は、もっと思い切った。都内から北海道の、それも大雪山の麓にある東川町に引っ越してしまったのだ。ご主人は海外の会社を中心に幾つかの業務を掛け持ちしているが、ほぼ全てリモートワーク。著者はホテル経営の傍らでヨガ教室を運営しているそうだ。昨今の情勢下で、海外からの来訪を見込んだホテルの客はほぼ0だが、ヨガ教室の方は、リモートでの利用者が全国にいて好評を博しているとのことだ。

 

地方移住の魅力については、この本の本文に当たっていただいても良いが、何より、移住を考えている人本人が、移住したいと考える土地に魅力を感じたことが移住への大きなモチベーションなのだろうから今更メリットをあげても仕方ない。

 

デメリットももちろん色々あるが、デメリットよりもメリットの方が大きいと感じるからこそ移住に踏み切るのだから、こちらも具体的なことをあげても仕方ない。

 

メリットとデメリットを比較する際に一番の大きな要因となるのは、収入の確保が可能か否かだ。私の場合は、現時点では、今の会社に奉職しながら通常の業務は在宅で行い、週に何度か出社して、早々に逃げ帰ってくるという勤務形態を取ることを考えているので、経済的基盤は今のままである。現時点での都心脱出者にはこのパターンが多いのではないかと勝手に推測する。まあ、一番イージーな移住の仕方だろうし、確実な方法でもある。

吉永氏のように、起業と同時に移住しようなどと考えるとそれはそれは大変なことになる。もちろん才覚に長けて、気力も充実した人は、どこであろうと成功するだろうし、移住先の自然をうまく利用できるだろう。残念ながら、私には私には才覚も気力もないので、今の生活をひきづりつつ、移住先での暮らしと折り合いをつけていくしかない。文筆業として食っていくための修行は続けようとも思うし、一層力を入れようという気にもなってはいるが、気持ちだけでなんとかなるとは限らないのは何をやるにせよ共通する困難さではある。何かに失敗した場合に、次の道が簡単に見つからないというのが、田舎に住む一番のデメリットでもある。都会よりも生活にかかる費用が少なそうだから、浮いた分を事業に回せばなんとかなるという理由だけで安易に田舎で起業すると、自分で2階に上がった後で、自分で梯子を燃やしてしまうような結果になりかねない。しかもその火が広がって、建物全体、すなわち、生活の全てが壊れてしまう可能性だってある。田舎暮らしに憧れて移住したはいいが、事業に失敗してスッカラカンになった上、家族も崩壊して一家離散なんて悲劇になることだって考えられる。吉永氏のような成功例の影には失敗例が累々と横たわってもいるのだ。一気に極端に突っ走ることなく、利用できるものは利用し尽くして、移住に取り組んでいくしかない。