脳内お花畑を実現するために

サラリーマン兼業ライター江良与一 プロブロガーへの道

ニヒルな色魔というキャラを全開にさせた狂四郎と、狂四郎のキャラを決定づけた「生い立ち」に触れた一作 『眠狂四郎無頼控 魔性の肌』鑑賞記

 

眠狂四郎無頼控 魔性の肌

眠狂四郎無頼控 魔性の肌

  • 発売日: 2015/09/21
  • メディア: Prime Video
 

録り溜め映画鑑賞記第6弾は、 12作作られた、市川雷蔵主演の『眠狂四郎シリーズ』の9作目である標題の作。そろそろ、シリーズの続編を期待するよりもマンネリさの方が鼻につきだす頃合いではなかっただろうか?というわけで、新風を吹き込むべく、狂四郎の生い立ちにまつわるエピソードが盛り込んであったり、従来よりもお色気シーンが多かったりという工夫が凝らされている。題名からしてこの作品の前の作品までは「剣」とか「斬る」って言葉がズバリ入ってたのに、この作品は「魔性の肌」だ。辞書のやらしい言葉に赤線引いてた中学生時代を思い出させるような仕掛けが、早くも施されている。

 

物語は金子信雄演じる闕所物奉行朝比奈修理亮が、ポルトガルから天草四郎宛に贈られたという黄金のマリア像を京都に護送することを狂四郎に依頼することから始まる。自らの出自が転びバテレンと日本人の混血であることを知っており、キリスト教に対してはかなり複雑な感情を持つ狂四郎は一旦断るのだが、修理亮の娘ちさ(鰐淵晴子)の操を報酬に引き受けることとなる。身も蓋もない言い方をすれば「引き受けるから娘と一発ヤラせてくれ」ってことで、これってのは現在でも褒められた交換条件ではない。雷蔵氏が例のクールな口調で「操をもらおう」と淡々と言うもんだから、イヤらしさってのはあんまり感じはしないのだが、男ってのは、どんなに冷静を装っていても所詮一皮むけば、欲望が渦巻いているのさ、って本音をいきなり突きつけられ、苦笑するしかなくなる。ま、事実だから仕方ないんだけど。

さて、そのマリア像を狙ってくるのは島原の乱の残党にして、徳川の世に仇なそうとして、悪魔を崇拝するようになった黒指党なる連中。首領三枝右近を演じるのは成田三樹夫。最近こういう悪役らしい悪役ってのはあまり見ませんねぇ。だからこそ『半沢直樹』で歌舞伎役者の皆さんが演じて見せた顔芸が新鮮に映るんですけどね。まあ、知的な悪役というよりはショッカーのボスキャラ死神博士っぽいキャラ設定ではあるが。

と言うわけで、京都に行く道々で黒指党の男たちは剣を抜いて襲いかかってくるし、女はいろんなシュチュエーションの色仕掛けでなんとか狂四郎の隙を突こうとしてくる。ニヒルな狂四郎はそれこそ眉毛ひとつ動かさず、襲撃を撃退し続ける。下半身と剣技は別人格ってことだが、こういう二面性は日本人の好むヒーロー像である。ゴルゴ13だって女にも戦いにも強い。中村主水は、ちょっと方向性が違うが、冴えない表の顔と凄みある裏の顔のギャップに痺れる人は多数いる。狂四郎はエロ要素が強すぎる部分はあるが、作品製作時の時代背景から考えると、そう言うお色気シーン見たさに映画館に通った人も多かったに違いない。公開当時は、今と違って電子デバイス一つあれば、いつでもどこでもエロ画像が見られる時代ではなかったのだ。エロい刺激を堂々と受けることができるのは映画くらいのもんだっただろう。まあ、それも時代のニーズを汲んだ結果だとしておこう。

ストーリー的には、京都に着くまでに、いろんな意味でふた波乱くらいはあるのだが、それは本編を見ていただく事にしよう。最終的には寂しさを伴う勝利が待ってはいる、とだけ述べておく。