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サラリーマン兼業ライター江良与一 プロブロガーへの道

マカロニ•ウエスタンの「お約束」だけで作られた一作『怒りのガンマン/銀山の大虐殺』鑑賞記

 

怒りのガンマン 銀山の大虐殺 MWX-205 [DVD]

怒りのガンマン 銀山の大虐殺 MWX-205 [DVD]

  • 発売日: 2017/11/27
  • メディア: DVD
 

 

マカロニウエスタンの代表作の一つ。主演の、リー•ヴァン•クレイフは数々の映画で脇役を務めた後、西部劇で人気が出て、代表的な俳優となった人物。西部劇界の「高橋英樹」とでもいうべき人物だろうか(個人の感想です 笑)。

 

題名に書いた通り、マカロニウエスタンとはかくあるべし、というテンプレ通りの作りに終始した一作。すなわち、かっこいいガンマンが出てきて、弱いものを救うために強大な敵役に単身で挑む。一度は苦境に立たされるものの、何らかの助太刀を得て、最後は派手なガンアクションで敵を倒してめでたしめでたし。で、ガンマンは平和になった村なり、牧場なり、山なりから、馬とか馬車に乗って去って行く。去りゆく後ろ姿を見ながら泣く美女一人…、ってなところだ。

 

というわけで、ストーリーはこの「文法」を忠実になぞって進行していく。主人公のガンマン、クレイトンは元公安官。「弱いもの」は殺人犯の濡れ衣を着せられた青年フィリップ。強大な敵は、法を味方につけ、さらに銀の採掘権の奪取を目論むサクソン三兄弟。タイトルで、思いっきり銀山という最終決戦の場が指定されちゃってるよ、おいおい。まあ、こういうわかりやすさが求められた時代があり、そこにマッチしたおかげで、マカロニウエスタンが商売になったってのも事実なんだが…。

 

で、クレイトンはサクソン兄弟がかけた懸賞金目当てにフィリップに襲いかかってくる有象無象と戦いながら、サクソン兄弟を追い詰めて最後には討ち果たす、というのが身も蓋もないネタバレ。「文法」に則った結末なんざ、最初からわかってるんだから、ストーリー中に、いかに自分自身で見所を探すかってのが、このテの作品鑑賞の醍醐味なんだよ!と強弁しておく。

 

この作品に欠けているのは最後に涙する美女くらい。一応、「弱いもの」の役割を担う、フィリップと、ひしっと抱き合う美女は登場するのだが、この美女はストーリーに関係なく、最後の最後でぽんって出てきて青年と愛を確かめて終わり。まあ、この取ってつけたようなシーンも粗製濫造のマカロニウエスタンの味わいだという好意的な見方も可能ではある。

 

悪役の三兄弟は変にスタイリッシュで銀山の利権を争うドロドロした人物たちがひしめく中では少々異質。クエンティン•タランティーノ氏あたりが、どこかの映画でオマージュを捧げそうなキャラ設定にはなっている。なんてなことを感じた上で、ちょっとググって調べてみたら、すでにタランティーノ氏は『キルビル』でこの作品のテーマ曲にインスパイアされた曲を使っているそうだ。さすが!目の付け所は少々違ったけどね(苦笑)。

 

この作品だけ観てしまえば、他の西部劇を見なくてもいっぱしの感想が述べられるというメリットのあった一作。西部劇とはどんなものかを要約したいときには便利、って普通の日常を送っている人間にはそんなことを求められる場面なんかほとんどないよね。