私は幼少時より、鼻が悪く、今に至るまで肥満体型を維持している期間が長かったので、無意識のうちにずっと口呼吸になっていたらしい。口からの方が大量に楽に空気を吸い込める。鼻呼吸に必要な横隔膜を使わずともすむからだ。
口呼吸というのは長期的にみると良くない習慣なのだそうだ。まずは口の中が乾き、唾液が十分にその機能を果たさなくなる。呼吸が浅くなり、精神的なストレスにうまく対処できなくなる。横隔膜による内臓への刺激が少なくなるため、いわば準備運動をせずに、いきなり全力でハイパフォーマンスすることを求められるような状態となり、負担が増す…。
なんだよ、まるっきり今の私の身体的、精神的な不調に当てはまっちまうじゃねーか、おい!つまり、私の不調の原因の一つは口呼吸にあったのだ。
では、口呼吸ではなく、メリットが大きい鼻呼吸にする(≒横隔膜を十分に活用する)にはどうしたら良いのか?答えはこの本の中にしっかりと記してあるので興味のある方は是非とも本文に当たっていただきたい。特別な道具やテクニックを必要としない方法がいくつか記されており、本を閉じた瞬間から実行が可能だ。
「本当に効き目があるの?」とお疑いの方も、まずは最低でも3ヶ月くらいは実践してみることをお勧めする。先にも書いたように、高価な器具を買い求める必要もないので、もし試してみて効果に満足できなくても、本一冊分の損失で済む。
私自身は、意外な方法で鼻呼吸が身につきつつある。私は睡眠時無呼吸症を患っており、その治療のため、睡眠時にはCPAPという機器を装着している。睡眠時無呼吸症というのは、大雑把にいうと舌や喉に無駄な脂肪がつくことにより、呼吸に必要な気道が確保できずに、結果的に酸素が十分に取り込めなくなって、十分な休養が取れず、疲労が蓄積していく症状を指す。CPAPという機器は、通常よりも高い圧力をかけた空気を喉に送り込んで、気道を確保する働きを持つもので、鼻の周りに送風のためのマスクを密着させ、口は閉じたままで呼吸することを要求される。したがって、いやでも鼻呼吸のやり方が身についてしまうのだ。とはいえ、起きて普通に活動する際には、ある程度意識しないとすぐに口呼吸に戻ってしまうのだが…。現在の業務はデスクワークなので、気づいた時には、鼻呼吸に戻すよう、横隔膜の動きを意識して是正している。この「横隔膜を動かす」ことを意識するだけでも随分と効果があるように私自身は感じている。
著者宮崎氏は、アスリートのみならず、バンドやヴォーカリストへの呼吸指導も行っているそうで、ヴォーカリスト用のトレーニング方法も記してあった。この部分に関しては、再読、精読し是非とも役立てたい。私の今の趣味上の課題の一つは、きちんとした声楽の発声方法を身につけ、バリトンの音域の作品をきちんと歌い切ることである。プロの歌手ならばきちんと声を出して伸ばし切っているフレーズを、途中で息が続かずにぶっちぎってしまうことが非常に多い。基本がしっかりできていない悲しさだが、ここをクリアしないことにはいつまで経っても歌は上達しない。息の量を自由に調節できるよう、トレーニングあるのみだ。飛沫が飛び交うことが敬遠され、実際に歌う「実戦練習」ができない今のような時期こそ、息の出し方という基礎練習をしっかり積むべき時だと心得て、しっかり練習したい。