のっけからこの駄文の題名についての言い訳を少々。
標題の書は2014年の発行であり、2020年初頭に勃発した今回のコロナ禍については当然のことながら何も記述がない。ただし、様々な疫病が流行るたびに都市伝説としてささやかれ、流行する「生物兵器説」や人口減少を狙った「作為的ウイルス散布説」については触れられている。
なんでも、「自然との調和を考えると、世界の人口は5億人程度が最適だ」と主張する団体があるそうで、様々な方法で人口の増加を抑制しようとしているかのビル•ゲイツもこの団体のメンバーだと噂されているそうだ。ビル•ゲイツはマイクロソフト社から得た巨額の個人資産を元に設立した「ビル&メリンダ•ゲイツ財団」で超音波を利用した男性の避妊法を研究しているとも噂されている。2010年には公の場で「新しい衛生サービスに真剣に取り組めば人口の10〜15%は削減できる」とも発言した。
ゲイツ氏の資産とマイクロソフト社を成功させたビジネス手腕があれば、人口増加抑制策の実現性は高そうだ。しかし彼の「思想」がちょっと変な方向に曲がってしまったら…。なんてなことを考えはじめると、昨今のコロナ禍ってのは人為的に引き起こされたものなんじゃないか?というヨタ話が多少なりとも現実味を帯びてしまうから困り物だ。現実の世で爆発的に利用者数が高まったリモート通信ソフトは、コロナ騒動勃発のほんの少し前にリリースされたもので、このソフトの利用促進のための「環境」作りだったと考えると、より強力だが少々ブラックがかった「納得性」まで生じてしまう。
いやはや。恐ろしいのは、現実よりも現実を作り出してしまった「理由」を後付けでひねくり出してしまう大衆なのかもしれない。ましてや昨今は、たとえ嘘であっても、声高に主張し続けることで無理やり「自分にとっての真実」を生み出してしまうという「ポスト真実」が大流行している。コトの善悪は別にして、世界中に大きな影響力を持つ、某超大国の変な髪型の最高権力者がSNSを利用して範を示しまくったことにより「ポスト真実」をひねくりだす大義名分がなし崩し的に生じてしまった。都市伝説の誕生にとってはこの上ない温床となることだろう。
こうした都市伝説から、もし暴動でも発生したら一体誰が責任を取るのだろう?という恐怖まじりの疑問はさておいて閑話休題。
標題の書には、小人や宇宙人といった「定番ネタ」から、上述したような巨大陰謀説、スティーブ•ジョブズ生存説など、世界に跳梁跋扈する様々な都市伝説が取り上げられている。そのまま読み飛ばすもよし、酒席や雑談などの場の話のネタにストックしておくもよし、真剣に受け止めて、核シェルターを買い求めてそこに籠るもよし、取り上げられているネタ同様、様々な楽しみ方のできる一冊である。
私自身としては、噂がどのように発生し、どのような過程を経て半ば面白おかしくねじ曲げられて、人口に膾炙し、そしてまたあらぬ方向にねじ曲がっていくのかに興味がある。
こういう噂そのものが一種の妖怪なのではないか?妖怪は、常識や科学的知識では説明のつかないもやもやした現象を切り取って、そのもやもや状態を実現する存在を想像し、実体化したものだ。名前もついてないし、実体化もされていないが、人を経るたびに様々に尾ヒレがつき、より強力なものになっていくところなどは妖怪そのものだ。人間がその存在に惑わされ、時には人生を狂わせてしまうようなところも、共通している。そして「幽霊の正体見たり枯れ尾花」、実際の姿を見てしまえば「なーんだ、こんなもんかよ」と思うところもそうだ(と思いたい)。
コロナウイルスに関しては、その性質について正しい知識を持って、感染予防策をしっかり講じながら日常生活を送るという、いわゆる「正しく恐れる」という姿勢が求められているが、噂話についても同様に、信憑性の高低を常に意識して、対処するという姿勢が必要となるのだろう。
どうせ、今は大きな声でしゃべることは咎められるのだから、ヒソヒソ話で「あくまでも噂だよ」と前置きして、仲間内だけでニヤつくくらいがちょうど良いのかもしれない。