脳内お花畑を実現するために

サラリーマン兼業ライター江良与一 プロブロガーへの道

パンクな世界観は悪くないけど、結局は任侠モノ『爆裂魔神少女 バーストマシンガール』鑑賞記

 

爆裂魔神少女 バーストマシンガール [DVD]

爆裂魔神少女 バーストマシンガール [DVD]

  • 発売日: 2020/05/02
  • メディア: DVD
 

 遥か昔に鑑賞したおバカ映画『片腕マシンガール』の続編(宣伝の謳い文句によれば「リブート」)。前作から10年を経た今作は、舞台を、架空のスラム街イシナリ地区に設定。そこは文字通り自分のカラダを切り売りする人々の集まる街(結構現実に即している気もするが、とてもじゃないけど現実の街を舞台にするわけにはいかない)。その街で現実世界で言うところの地下アイドルとして活動する、主人公アミとその妹ヨシエは街を牛耳る人体器官売買組織ダルマ屋にそれぞれ内臓と、右腕を奪われた過去を持っている。

 

で、ある日ダルマ屋の女主人青山ダルマの息子青山カルマ(実在人物に見事にかすらせてますな 笑)をヨシエが半殺しにして、重度の障害者にしてしまう(作中では「カ○ワ」と言う類の放送禁止用語が散々に飛び交う)。それに怒ったダルマはヨシエを拉致して散々いたぶる。アミは何故か、心からの謝罪をダルマに対して行うことで許してもらおうとするが、そもそも悪の権化で、かつ溺愛していた息子を最終的には殺されてしまったダルマの怒りが収まるはずもなく、アミはダルマとその手下たちに袋だだきに合った上で、左腕を切り落とされてしまう。こういう、ヒロインが散々にいたぶられて血みどろになり、かつ、唾や鼻水みたいな体液をだだ漏れさせ、最後には吐瀉までしてしまうような展開というのは一部のカルトなファンに、熱狂を持って受け入れられるだろうことは想像に難くない。それからアクションシーンをミニスカートのセーラー服で行い、モロに下着をみせるというのも、作品そのものというより、窃視症というか盗撮願望のような若干歪んだ欲望を満たすことで観客のウケを良くしようという作り手の意図がミエミエである。実にあざとくはあるのだが、ここはあえてその安っぽいミエミエさを狙った演出であると好意的にとっておく。

 

何しろ、世界観の設定そのものがチープなパンキッシュさ満載なのだ。そこではエロもグロもナンセンスもなんでもあり。いかに常識ってやつとかけ離れた世界を展開するか、という勝負に出ていたと思うのだが、この「かけ離れ感」、この作品に限ってはなかなかうまく作用していたように思う。こんな世界あるわけねーじゃん、というツッコミが最初から最後まで頭の中を駆け巡るのだが、まあとにかくその不条理さが徹頭徹尾貫かれているので、しまいには笑うしかなくなるのだ。恐るべき物量作戦である。思考能力を押し流すほどに、ぐちゃぐちゃな情報の塊が次から次へと襲ってくるのだ。ただただ、そのぐちゃぐちゃ情報を横目で見ているだけで、十分にこの作品の世界観は伝わってくる。

 

最後は結局勧善懲悪というか、姉妹がダルマに追い詰められながらも復讐を果たすという結末に終わるのだが、ま、ストーリーは完全におまけ。いかに作中の世界観から面白さを感じることができるかがこの作品を鑑賞するキモとなる。金と時間かけて大きな劇場で観ようとは思わないが、酔っ払った頭で、深刻なことを考えたくない気分の時にはオススメしたい。